『気候紛争』関山 健 著 温暖化が災害と紛争を招く【書評】 - 世界日報DIGITAL
副題は「たった『2℃』が起こす戦争」。 これは気候変動が遠因となって起きた騒乱、暴動、内戦、さらに国家間対立に関する資料であり、今後の可能性について語った本だ。脅威は気温の上昇とともに指数関数的に増大するだろうという。 世界各地で異常気象が続いている。2025年だけでも日本では群馬県伊勢崎で8月に41.8度の酷暑を記録し、スペインでは6月に46度に達した。フランスでは学校が休校となり、一部の原子力発電所が冷却水不足で稼働停止に。米国では1月に西部ロサンゼルスを山火事が襲い、数千棟の家屋が焼失。 背景にあるのが地球温暖化だ。世界各国は二酸化炭素の排出を抑えるカーボンニュートラルを目指しているが、対策は減速気味。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば、19世紀と比べて2030年代には約1.5度、50年代には約2度温暖化が進むらしい。 地球平均気温のわずかな上昇は、気流や海流の流れを変え、大気中の水蒸気を増やし、海水の温度を上げ、水面を上昇させ、さまざまな変化を引き起こす。酷暑、干ばつ、豪雨を頻発・激甚化させ、水不足、食料不足を引き起こすと予測される。 これらの環境変化は民族対立、貧困、不平等といった紛争の火種を煽(あお)り、反政府暴動、内戦にもつながり、脆弱(ぜいじゃく)性を抱えた開発途上国で深刻だ。しかし、先進国も移民問題や資源競争など、無縁ではないという。 2011年に始まったシリア内戦は、その前に3年連続で襲った深刻な干ばつが引き金となり、統治機構の不全や農業基盤の脆弱さで拡大した。 水不足が国家間紛争の要因となる一例として、中国からタイ、カンボジア、ベトナムと流れるメコン川がある。上流の中国で10以上のダムがあり、その存在が関係を複雑にする可能性がある。 著者はどのような条件が紛争を招くのか分析し、気候変動対策が引き起こす国家間対立にも触れて、危機の全体像を示す。